建築実例

愛猫と借景を眺める家

公園の隣という、恵まれたロケーションに建つMさん邸。

以前この場所にあった二世帯住宅を、現在の家族構成に合わせて、

お子さまと2匹の猫との暮らしにちょうどいい広さへと建て替えた。

 

新しい住まいの主役は、なんと言っても窓の外に広がる豊かな緑。

建築士の三浦さんが提案したのは、公園の景色を一枚の絵画のように切り取る、

2階リビングの大きなピクチャーウィンドウである。

 

視界いっぱいに緑が広がり、室内にいながら、まるで森の中にいるような穏やかな時間が流れる。

この窓辺は、猫たちにとっても特等席。

公園にやってくる鳥を眺めるのが、すっかり日課になったそう。

 

猫たちのための工夫はこれだけではない。

吹き抜けには、運動不足を解消するためのキャットウォークを設置。

家中に、2匹だけのお気に入りの場所がいくつも用意されている。

 

そしてこの家のもう一つの特徴が、未来を見据えた「柔軟性」。

いずれお子さんが独立した後の暮らしを考えて、1階だけで生活が完結するよう

Mさんの部屋と水まわりはすぐ近くに配置。バリアフリーにも配慮した。

「年齢を重ねても、できるだけ自力で暮らしたい」。

そんなMさんの想いを、間取りが静かに支える。

 

現在の家族と、未来の自分。そして、大切な猫たち。

そのすべてに優しく寄り添う、懐の深い住まいが完成した。

家族構成 本人+子ども1人+猫2匹
所在地 東京都
本体価格 2,000万円
敷地面積 70.04㎡(21.1坪)
延床面積 64.71㎡(19.5坪)
竣工年月 2024年7月

担当
三浦 さつき

愛猫の特等席
採光とプライバシー、公園の借景を活かすために2階LDKを採用。床のすぐ上に設けた「地窓」は、愛猫たちが外の景色を楽しむための、特別なプレゼントだ。ここから公園にやってくる鳥を眺めるのが二匹の日課。人も猫も自然を身近に感じられて、穏やかな時間が流れる
公園の緑もデザインの一部
新居のテーマは、隣接する公園の緑を「借景」として暮らしに取り込むこと。そのテーマを際立たせるため、あえて無機質なコンクリート打ちっぱなし風のモダンな外観デザインに
壁はシンプルに、床は豊かに
「床は本物の木がいい」。そんなMさんのこだわりで選ばれたのが、豊かな表情を持つアカシアの無垢フローリング。これを主役にするため、壁や建具はあえてシンプルなデザインに。リビング上部の小屋裏収納へは梯子でアクセス可能
日常にひなたぼっこを
細長いスリット窓からも暖かい光が取り込まれ、思わずウトウトしそうな陽だまりが生まれる
ちょっぴり贅沢なヌック
リビングの一角に設けた小さなタタミコーナー。当初はゲスト用のつもりだったが、今では家族がごろごろと寛ぐ、一番人気の場所に。「ほどよい“こもり感”が贅沢なヌックのよう。寝転がると空が見えるのも気持ちがいいんです。雪が降ったら、こたつを出して日本酒でも飲もうかな」とMさん
定番のL字型キッチン
キッチンは使い勝手の良いL字型をセレクト。床のアカシア材との相性を考え、シンプルな白を基調としたデザインに。壁に設けた造作のウォールラックは、愛猫のお気に入りの場所のひとつ。ひょっこりと顔を出す姿に、日々癒やされているそう
“好き”を、飾るようにしまう
玄関脇のシューズインクローゼットには、クライミングが趣味だというお子さんのザックやロープがずらり。まるでお店のディスプレイのように収納するこのアイデアは、なんとご本人の意見を参考にしたもの。使いやすさと、見た目の美しさ。その両方を叶えた、家族みんなが納得のスペースだ
世界観をつくる
「落ち着いた雰囲気が好きだから」。そう話すお子さんが自ら選んだのは、ノーブルな色合いの壁紙。三浦さんはそのセンスを尊重し、巾木やスイッチプレートといった細かなパーツまでシックな色で統一することを提案。部屋の完成度がぐっと高まった
階段下にもデザインを
階段下のスペースをデザインの一部として活かしたトイレ。壁に貼られた個性的なミントグリーンのクロスは、実は夫人の寝室で使われているものと同じシリーズ。プライベートな空間同士を、さりげなく同じデザインでつなげる。そんな遊び心が、家への愛着を一層深めてくれる
光は通す、視線は通さない
一見すると普通の窓。しかしこの窓ガラスは、ほんのりブロンズ色が付けられている。日中は室内に心地よい光を取り込みながら、外からの視線はさりげなくカット。レースのカーテンがなくても、プライバシーがしっかり守られる

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