普段からデザインに携わるお施主さま。
その卓越した色彩センスと暮らしに対する深い洞察は、この家の隅々にまで息づいている。
「この家のほとんどが、お客さまのアイデアです」と、
建築士の赤秀さんが語るほど、こだわりが詰まった住まい。
その象徴といえるのが、18.2畳の2階LDKである。
大胆な吹き抜けの「明るく開放的なリビング」と、
ネイビーとグレーを基調とした「落ち着きのあるダイニング・キッチン」という異なる2つの表情。
このユニークなカラーコーディネートは、お施主さま自身のアイデアだ。
空間を柔らかく仕切りながら、光や風、視線を優しく通す「Rの垂れ壁」もこの家のモチーフ。
赤秀さんと「家型か、R型か」と熟考を重ね、より流行り廃りのないR型を選んだという。
意外なことに、デザイン以上にこだわったというセキュリティや機能面。
「“流行っているから”という理由だけでは選びたくなかった」とご本人が言うように、
長く、安心して住まうためのプランを随所に取り入れている。
「ずっと愛着を持って暮らせるように、手入れのしやすさや、
時間が経っても古くならない普遍性を大切にしました。
経験豊富な赤秀さんのアドバイスは、本当に頼りになりました」とのこと。
流行のデザインを追うのではなく、自分たちの価値観と、プロの知見を融合させる。
そうして生まれた住まいは、これからも永く、家族の暮らしに寄り添い続けるのだ。
天井の高さで目的を変える
18.2畳のLDKはリビングとダイニングであえて天井の高さを変え、空間をゆるやかにゾーニング。壁に設けた大きなマグネットボードは、建築士・赤秀さんの提案だ。その日の気分に合わせて飾るものを変えれば、手軽に部屋の雰囲気をカスタマイズできる
邪魔をせず、存在感を発揮するブルー
白・黒・グレーで構成された落ち着きのある空間に、ネイビーのアクセントウォールがしっくりと馴染む。「ブルー系は、他のアイテムを邪魔しない色だから」という、お施主さまのセンスが光るカラーコーディネートだ。耐久性に優れたアイカのキッチンカウンターは、木調と黒で悩んだ末に黒を選択。ネイビーとの相性も良く、空間全体にインパクトと深みを与えている
我が家のビュッフェカウンター
壁一面に設けた奥行きたっぷりの造作カウンター。パソコンを広げての在宅ワークも、趣味の作業も、ゆったりと快適だ。「ゲストが来た時には、料理をずらりと並べて、ビュッフェみたいに楽しみたいんです」と夢は広がる
光のための設計図
開放感あふれる吹き抜けのリビング。一日を通して、最も心地よい自然光が部屋の奥まで届くように。建築士と何度もシミュレーションを重ね、高窓の数や配置を慎重に決めていった。計算し尽くされた設計が、空間に圧倒的な明るさと広がりをもたらしている
“思い立ったら、すぐ”を叶える
使いやすさを第一で選んだクリナップ製のキッチン。調理道具は「使いたい時にさっと取り出せる」ことを目指し、手の届く範囲に見せる収納でまとめた。ウォールラックの棚板は、置きたい道具のサイズを事前に測り、1ミリの無駄もなく調整。ストレスフリーなキッチンは、緻密な計画の賜物だ
ロフトライブラリー
L字型ロフトは壁一面に造作本棚を設え、まるで図書館のように。当初は明るさ重視でアイアン手すりも検討したが、本の日焼けを防ぐために、壁にスリットを入れて採光するプランに変更。大切な蔵書を守りつつ、心地よい光と落ち着きを両立させた
無駄を省けばキレイが続く
スペースを無駄なく活用した造作の洗面台。手持ちのバスケットがぴったり収まるよう、棚の高さまで計算されている。すっきり片付くだけでなく、日々の整理整頓がぐっと楽になり、キレイな状態を維持しやすい
センスの証は、Rの縁取り
ケーキの型だけでも数十個。そんなたくさんのキッチン道具を収めるため、Rの垂れ壁の奥に大容量のパントリーを設けた。アーチを木で縁取るアイデアは、お施主さま自身のもの。赤秀さんも「センスの証ですね」と感心した、こだわりのディテール
プライベート空間もRでまとめる
ウォークインクローゼットの入口にも、この家のモチーフであるRアーチを採用。約2畳の空間には、家族の衣類はもちろん、季節の荷物などもしまえる十分な広さを確保。デザインの統一感が、家全体の完成度を高めている
ふたつのアーチ、どっちへ進む?
玄関からの眺めを印象的にする、左右対称に並んだ2つのRアーチ。左は2階のパブリックスペースへ、右はプライベートな空間へと、それぞれ違う場所へつながる。毎日通る場所だからこそ、ドラマチックな演出を
空色のプライベート空間
トイレの壁には、心を落ち着かせる、空のような淡いブルーのクロスを。暗くなりがちなトイレ空間も、この爽やかなブルーと、窓から差し込む自然光のおかげで、明るく清潔感のある雰囲気に。壁に設けたニッチや、木目調の吊り戸棚が、シンプルな空間に温かみを添えている
階段の下の小さな部屋
階段下のスペースを有効活用したトイレ。むき出しの階段の裏側が、そのまま空間のデザインの一部になっているのがユニークだ。壁は優しいイエローとグレーでコーディネートされ、コンパクトながらも温かみのある空間に
壁のようにさりげなく、でも、たっぷりしまえる
玄関には壁と一体化した大容量の壁面収納を。靴はもちろん、こまごまとした物もすべて扉の向こうに隠すことで、いつでもすっきりとした空間を保てる。壁に設けた小さなニッチが、季節のしつらえを楽しむ余白を生んでいる