Yさんが新居を構えたのは世田谷の住宅地。隣家が迫る住宅密集地で、敷地は約27坪とややコンパクト。外側にぴったりと閉じたプランで、中の様子をうかがうことはできない。(もしかして、室内は薄暗くてちょっと窮屈?)。そんな意地悪な想像をしてしまうが、2階リビングに足を踏み入れた途端、それはあっさりと裏切られる。とにかく、とにかく、明るい。そして気持ちがいい。夫人の遊び心から生まれた、勾配天井に沿ってずらりと並んだ高窓。ユニークな形状のまま取り込まれた光が、空間に不思議なリズムをもたらしている。その光は、スケルトン階段やダイナミックな吹き抜けを介して、フロアの隅々へ。心地よい開放感に包まれた室内はゆるりとした空気が流れ、家族や訪れた友人は心からリラックス。まるでお気に入りのカフェに来たみたいだ。「プライバシーを考えて、窓の位置もすべて計算済み。カーテンなしでも隣家や通りの視線が気になりません」とYさん。都内の家づくりを知り尽くすTAINN DESIGN。担当した一級建築士の鶴田さんは、ご夫婦のオーダーと自身の知見を織り交ぜながら、この土地のポテンシャルを最大限引き出すプランを熟考。結果的に、こんなにも心地よく、のびのびと過ごせる住まいが完成した。
心地よいタテの広がり
2階リビングとロフトをつなぐスケルトン階段。鉄骨と木を組み合わせたデザイン、サイズも調整するなど、オーダーメイドでいちから作ったものだ。時間によって窓から取り込まれた光が段差を通り抜けて、美しい陰影を楽しむことができる
プライバシーを守るプラン
「全体は白く、アクセントで真ん中を黒く」というオーダーから生まれた外観。「外に閉じたプラン」で、外からの視線も気にならない。約27坪の敷地に、車1台分の駐車スペースも確保
タイルは「やはず張り」
質感豊かなグレーのキッチンは、「GRAFTEKT(グラフテクト)」。板張り天井とも相性が良く、カフェのようなほっこりとした雰囲気を醸し出す。壁のタイルは、「やはず張り」という少し変わった張り方を採用。斜めに張っていく目地割り方法で、夫人がSNSで調べた
キッチンからの風景
LDKは18.7畳。吹き抜けの効果でもっと広く感じられる。床は高級感のある挽板フローリング。厚く挽いた木材を貼っているため、見た目は無垢材に近い雰囲気で足触りも良い
大人の秘密基地
固定階段でアクセスできるロフトは10.5畳。レコードや漫画など、Yさんの「好き」を凝縮した趣味空間だ。本を読んだり壁にプロジェクターを投影して映画を観たり、ぜいたくな時間を過ごすことができる
これから青くなる場所
LDKの一角に設けたワークスペース。「仕事に集中できるように、ここだけ青いクロスを張りたいな・・・」とたくらむ夫人。Yさんは必死で止めているそう
すっきり整然と
玄関正面には大きな姿見があり、出かける前に身だしなみをチェック。間接照明が幻想的な雰囲気を演出している
階段下のクローク
扉を開けると大容量のシューズインクローク。靴だけでなく、スケートボードやスーツケースなど大きなものもしまっておける。畳んだ段ボールを一時的に隠す場所としても
天窓の明かりで仕事もはかどる
Yさんの仕事部屋。珍しいタイプの押入れは、来客用の布団をすっきりしまえるサイズだ。上部には明り取りの天窓を設けており、作業中の手元を明るく照らしてくれる。手前には趣味のブレイクダンスの練習ができるように、大きな鏡を設置
生活感を隠しきる
洗面室はハイグレードな設備を採用。鏡裏をはじめたっぷりの収納を備えているため、細々したものもすっきりしまっておける
トイレがギャラリーに
トイレは、アクセントクロスとモザイクタイルに注目。デザインの一部にも見える棚は、実用性はもちろん雑貨を飾って楽しむこともできる