約35年間住まれた家を、このたび建て替えることにしたOさん。
旧家は長い廊下や和室を備えたいわゆる日本家屋。必要十分、シンプルな暮らしを好まれるご家族にとって、それらのスペースは価値観やライフスタイルにマッチせず少し持て余されていた。
「今の自分たちにはもっとコンパクトな家で十分。無駄な掃除もしなくてすみます。ただ減築してもバスルームは広くしたり、断熱性を高めてさらに床暖房も入れたり・・・居心地の良さは妥協しませんでした」と夫人は話す。
整理収納アドバイザーの勉強中で、ほどよくミニマリストでもあるOさん親子。手間なくキレイを維持できる「汚れにくい、汚れても落としやすい」プランを追求された。それまで学んだ知識や建築士の三浦さんのアイデアも借りながら、完成したのは「10分ですべての掃除が終わる家」。一気に掃除機をかけられるよう、障害となるドアはサニタリーの3つだけ。雑草が生えないコンクリート張りの庭、ほこりが溜まる梁は設けない。一見便利なロボット掃除機は、ロボット掃除機の手入れをしなくちゃならないのであえて使わない・・・などなどほんの一例だ。
「以前は年末にまとめて大掃除。トータルの時間は変わらないかもしれませんが、日々の気持ちよさが全然違います。毎朝の掃除が終わったら趣味のサックスを練習する時間。トイレ掃除まで終わっているので、堂々と好きなことに没頭できます(笑)」。
都内変形地で建てる
開放感たっぷりの室内からは想像できない、隣家に囲まれる旗竿地に建つOさん邸。住宅地でも周囲の視線を気にせずのびのびと暮らせる工夫が満載である。モダンな外観デザインは汚れが目立ちづらいネイビーで、メンテナンスがラクなサイディングを選んだ
防寒対策もしっかり
旧家は冬の寒さも悩みの一つ。建て替えるにあたり、吹き付け断熱や床暖房、樹脂サッシなど、さまざまな防寒機能を取り入れた。大きな窓はカーテンではなくブラインドを採用。シャープなデザインと、やはり掃除のしやすさで選んだものだ
背丈にあわせたカウンター
食器洗いの担当は夫であるOさん。180cmと高身長なので、作業がしやすいように高めのカウンターを選ばれた。球形の照明はご家族が海外から取り寄せたこだわりの一品で、ダイニングテーブルの中心に来るように配線の位置を調整している
カスタム自由なキッチン
たっぷり収納できるクリナップのキッチン。標準仕様の食洗機を引出収納に変更したり、カスタマイズも自由だ。ゆったりとした通路幅ですれ違いやすく、同時に作業しやすいのもよい。整理収納の知識を生かし、汚れやすいキッチンマットは敷いていない
みんなの書斎
パナソニックのインテリアカウンターで作ったデスクは、カーブの具合や椅子が入るスペースなどOさんが細かくオーダーしたもの。書籍類がぴったりと収まる本棚は、手元に残す本やCDの量に合わせて造作した
ぴったりサイズのシューズボックス
「雪かき用のシャベル」「ゴルフバッグ」「20足の靴」・・・以上。先にしまうものを決めてしまい、その容量にあわせてオーダーした特注のシューズボックス。デッドスペースが一切なく整然とした様が美しい。「扉をつけると何をしまったか忘れてしまうので、あえてオープンにしています」とのこと
家じゅうの服をひとまとめに
家族みんなの衣類は、約1.5畳のファミリークローゼットにまとめて収納。玄関と隣り合う配置で、帰宅後にすぐコートを掛けに行けたり何かと便利だ。タオルや下着以外の洗濯物は、取り込んだらハンガーのまましまうルール。随所に時短家事の工夫が散りばめられている
一直線に上る
途中で体の向きを変える必要がなく、直線で上りきれる鉄砲階段。一段の高さも15cm以内に収めるなど、徹底的に上りやすさを追求した。そのため段数が20段とやや多く(一般的には13段)、大迫力の風景に
吹き抜けからの風景
ほこりの溜まりやすい梁を排除し、すっきりとした吹き抜け空間に。天井をやや勾配にすることで、いっそう広く感じさせる。2階のピクチャーレールは、絵画が得意なお子さまたちの作品を飾れるように三浦さんが提案したものだ
いつも清潔を保てる水まわり
白で統一された清潔感のある水まわり。ほこりや髪の毛が溜まりやすい場所なので、掃除がしやすい「R巾木」を採用した。衛生第一の食品工場や給食センターなどで使用するケースが多いが、一般家庭でも真似したいアイデアだ。「汚れが巾木に溜まらないので、シートでさっと床を拭けばお掃除終了です」
壁じゃなくて、ブースで仕切る
各々の寝るスペースはドアを設けず、ブースで仕切るスタイル。フラットな床は一気に掃除機をかけることができて、大幅な時短家事を叶えてくれる。ちなみにこちらの畳ベッドは、同社モデルハウスの小上がりからヒントを得て造作したもの。下の引き出しには冬の布団類をすっきりと収納している
ユニバーサルデザインの玄関
玄関ポーチには足への負担を軽減する手すりと、コンクリート洗い出しのスロープを設置した
不思議な寝室
人形作家であるお子さんの作品を保管するスペース。人形のサイズに合わせて棚板の高さなど自由に変えられるようになっている。異様な風景ではあるが、一人ひとりベッドで眠っているようにも見え不思議と愛着が湧いてくる