建築実例

角地を活かしたビルトインガレージの家

子どもの進学を控え、家づくりをスタートさせたKさん夫婦。それまでの家は屋上と地下室が備わったメゾネットタイプ。少し個性的な住まいを好むKさんと、「むかしから間取りを眺めるのが好きだった」という夫人のあこがれもあり、ごく自然に注文住宅を選ばれた。「水まわりの家事があまり好きじゃなくて・・・」と苦笑する夫人の要望は、毎日の家事をラクに、そして楽しくすること。いちばん長い時間を過ごすキッチンから、洗濯機が稼働する洗面室、家族が集まるリビングにすいすい移動できるよう、建築士の水澤氏はメジャー片手に1センチ単位で、動線の長さ・幅を調整。効率的な家事動線を探っていった。さらに少しでも気分が上がるようにと、キッチンに鮮やかなイエローを採用。落ち着いたネイビーとの組み合わせも大正解で、K邸のテーマカラーとなった。「レギュラーのキッチン家電がすべて並ぶ棚の幅、少し背が高いわたしに合わせたカウンターの高さ、大人が荷物を持っても余裕で通れるギリギリの通路幅・・・水澤さんが何度もシミュレーションしてくれて、ついに『これ!』という正解が見つかりました。無駄な動きがなくなって、家事の時間もストレスも激減。ただラクになりすぎて、ちょっと幸せ太りかも…(笑)」と、夫人はすこしお困りの様子だ。

家族構成 夫婦+子供
本体価格 3080万円
所在地 東京都練馬区
延床面積 110.56㎡(33.4坪)
敷地面積 110.62㎡(33.4坪)
竣工年月 2019年12月

担当
水澤 恭輔

長方形の土地を活かしたガレージハウス。住宅地なので通り側の開口部は、小さくそして最小限に。ユニークな配色でベースの白にガレージ部分の渋いグリーンと、エントランスのモザイクのような木製素材。そしてK邸のテーマカラーである愛車の鮮やかなイエローがよく映える。施工中にこの外観デザインを気に入ったご近所の方が、タインデザインに自らの新居について問い合わせされるというエピソードも
ビタミンカラーのイエローが目を惹くシステムキッチン。炊事があまり好きではないという夫人が「少しでも気持ちが上がるように」と、あらゆるショールームに通って選び抜いたものだ。カウンターは既製品と造作を組み合わせた、同社のオリジナル。170cmの夫人が快適に使える高めの作業台、手前にお皿が並べられるIHの3連コンロなど、日々の家事ストレスを軽減する工夫をたっぷり詰め込んだ
深みのある木の風合いが心地よい、板張り天井のリビング。ただ一面に張りつけるのではなく、ポイントを絞りセンス良く配置することで、デザイン性もアップした。テレビ上部に設けた開口部は、奥のタタミスペースにリビング側の明るい光を届ける役目。固定階段の目隠しであるイエローのクロスも、空間のアクセントとして利いている
ポップなイエローとのコントラストで選んだ、落ち着いたネイビーのカップボード。この2色を軸に住まい全体のカラーコーディネートを考えたという。背面のカウンターは、置きたいキッチン家電をあらかじめイメージすることで、すっきり・ぴったり収まるサイズに。夫人がSNSで探したサブウェイタイルや、アイアンと木で造作した飾り棚も空間を彩る。もちろん使い心地も抜群で、カップボードは大小さまざまな食器を効率よく収納。なかでも回転式で手前に引き出せるタイプのカゴ収納には、夫人も感動したそうだ
ちょっとした食事ならここでと造作したカウンターは、現在、夫人のテレワークスペースとして大活躍。キッチン内の洗い物や洗剤などが見えないように、壁の高さにも配慮した。上部に見えるのは6畳の小屋裏収納。ひな人形や冬の布団といった季節物から、時々必要になる取り扱い説明書まで、なんでもしまっておくことができる
水まわりやリビングへのアクセスがラクな2wayキッチン。右側の通路は夫人が通りやすいギリギリの幅を探るべく、建築士の水澤氏がメジャー片手に何度も調整していった
ダイニング上部に配置した重厚感のある木の梁が、左側のリビングと緩やかにゾーニング。ナチュラルモダンなリビングは、植物の緑やポップなイエロー、ソファの絶妙なブルーが空間のアクセントになっている
キッチンからリビングへのコンパクトな動線。家族に呼ばれたら、すぐに駆けつけることができるので便利だ
バルコニーからの採光とダイナミックな吹き抜けにより、心地よい光に満ちた2階リビング。外側に閉じた外観からは想像もつかないほど明るい空間で、いつも自然と家族が集まってくる
床下をまるごと収納にした小上がりのタタミコーナーは、子ども2人の勉強部屋。ゆったりと足を伸ばせる掘りごたつ式で、ストレスなく机に向かうことができる。教えたり教わったりしやすいよう壁の半分には黒板が貼られ、取材当日も授業の形跡が。もう半分の壁はコルクボードになっていて、写真や絵など思い思いのお気に入りを飾ることができる。また扉の代わりにルーバーで仕切ることで、リビングにいる家族を感じつつも、目の前の宿題に集中することができる
「1日に最低でも30分は居る場所だから、少しでも居心地のよい場所に」と夫人がプロデュースした家事室は、心地よい青空が広がる非日常の空間。造作の作業台も備えられ、洗う~畳むまでが一気に片付く。また「洗濯物を外に干す理由がなくなりました!」と夫人が絶賛するガス乾燥機は、肌触りがよくふかふかの仕上がり。いつもの洗濯がさまざまな工夫により、楽しいものに変わったそう
おこもり生活で大活躍。保存食をたっぷりストックでき、買い物の手間を減らしてくれるパントリー。棚と収納ボックスのサイズもぴったりで、無駄なくスペースを活用できる。ちなみにここは、お掃除ロボットの基地でもある
玄関には家族みんなのコート掛けを造作。間接照明を取り入れたユニークなデザインで、ちょっと腰かけるのにも便利だ。わずかなスペースもニッチとして利用するなど、ホスピタリティあふれるプラン
朝の混雑を見越して、2ボウルの洗面台を採用。家族に急かされることなく、しっかりと身だしなみをチェックできる
子ども部屋はいずれ2部屋に間仕切ることを見越して、完全なシンメトリーのデザインに。色違いのアクセントクロスとコーディネートした、ファブリック類もおしゃれ
2階のトイレは、パステルカラーのさわやかなクロスを採用。デッドスペースになりがちなコーナーを有効活用する収納キャビネットは、「いいものに出会った!」と夫人も大満足。Rのカーブを描くデザインも素敵
1階のトイレは鮮やかなブルーの空間に。好みのクロスをあれこれと自由に選べるのも同社の特長だ
玄関正面の特等席に飾られた、家づくりの思い出。「家族の手形が浮かび上がってるように見せたい!」とKさんから相談された水澤氏。「枠に入れちゃうと少し野暮ったいかな」「土台はベニヤ板を重ねたらいいかも」など、お互いアイデアを出し合い最後までこだわり抜いた

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