建築実例

土間とつながる21畳のリビング

「もともと田舎の広い家で育ったせいか、狭い空間がどうしても苦手で。なかでも長い時間を過ごすリビングは、いちばん重要。賃貸住まいの頃も、広いリビングを求めて10回以上引っ越しました」。そう話すHさんの希望は、言うまでもなく「家族がゆったりとくつろげるリビング」。実際以上に広く感じられ、そして広く暮らせるリビングをオーダーされた。建築士の水澤氏が考えた作戦は、LDKフロアの仕切りをできるだけ排除し、広がりと開放感を生み出すというもの。まずは玄関とリビングを隔てる壁や、小上がりスペースの扉をすべて排除。さらにキッチンの手元を隠すための壁もギリギリまで下げ、視線が抜けるように工夫した。同じように高さにも着目。リビングの中心を折り上げ天井にすることでタテの広がりを強調し、より広々と感じられるようにした。「LDKは視界を遮るものが何もないので、キッチンで家事をしながらでも、つねに家族の様子をうかがうことができます。玄関も子ども部屋につながる階段も、ひとつの空間にまとまっているので、子どもたちが帰ってきたらすぐに気づくことができて安心。これから思春期を迎える子どもを持つ親にとってはうれしいプランです」と夫人。3人の子どもたちが時にケンカもしながら、リビングでのびのびと過ごす。それがH邸の風景だ。

家族構成 夫婦+子供3人
価格帯 2000万円台
所在地 東京都杉並区
延床面積 103.68㎡(31.3坪)
敷地面積 104.29㎡(31.5坪)
竣工年月 2020年2月

担当
水澤 恭輔

担当
上野 紫音

土間玄関と一体感のある開放的なLDK。もともとは壁で仕切る予定だったが、最終的には必要に応じてカーテンで仕切るプランに。ふだんはフルオープンの状態で、より広々と感じられる。タテの広がりを生む折り上げ天井には、インテリアと相性の良いグレーのクロスをチョイス。存在感のある見せ梁もアクセントとして利いている
収納量と食洗機にこだわったキッチンは、夫人がショールームで選び抜いたもの。対面に配置した小上がりのタタミスペースは「和風ダイニングバー」のような雰囲気で、夫婦で晩酌を楽しむことも増えたそうだ。たくさんの居場所がある広々としたLDKだが、家族はつい夫人がいるところに集まってしまう
外から帰ってきた子どもが、家族と会わずに自分の部屋に直行・・・なんてことがないようリビング階段を設置。家族のコミュニケーションが自然に育まれ、子どもの微妙な顔色の変化にもすぐに気づくことができる
長い玄関土間は、壁一面をめいっぱい使ったシューズクロークを設置。家族5人分の靴はもちろん、傘や子どもたちのかばんなど、細々したものをすっきりしまっておける。ほっこりするアールの垂れ壁の奥は、トイレとコンパクトな手洗いスペース。メインの洗面台は2階だが、帰ってきてすぐに手を洗えるよう夫人がオーダーした
リビングに隣接する小上がりのタタミコーナー。床下はすべて収納スペースとして使え、食品のストックや、キッチン家電、夫人の美容機器、消耗品などなど・・・ジャンル問わずさまざまなものをしまっておける。壁一面にしつらえた造作棚は、所持する本のサイズや冊数などを事前に確認し、ぴったりのサイズで仕上げた
約21畳のLDKは一切の仕切りがなく、いちばん奥のキッチンから玄関までしっかりと見渡すことができる。さらにキッチンの壁を下げたことでより視線が抜け、料理や片づけの最中でも外から帰ってきた家族とすぐに顔を合わせることができる
各部屋のクローゼットをすべてなくし、代わりに3.5畳の大型ファミリークローゼットを実現。洗濯物をしまうスペースが1か所なので家事負担が軽減される。バスルームや洗濯室の動線上に配置したのも、もちろん計画のうち
小屋裏収納は固定階段を挟んで2つの空間にセパレート。奥側はスーツケースや子どもたちの荷物をたっぷりしまえる純粋な収納。そして手前のカラフルな空間は、収納兼、子どもたちの隠れ家に。低い天井のこもり感と、おもちゃ箱のようなわくわく感に、遊びに来た子どもの友だちもくぎづけだ
グレーのアクセントクロスと勾配天井が、素朴でかわいらしい印象の2階洋室。来客時は客間としても使うが、現在はもっぱら洋裁が好きな夫人の趣味部屋に。めいっぱい布を広げたりミシンを置ける広めのデスクを置いても、まだまだ余裕の4.5畳。「自分の部屋があっていいなぁ~」は、Hさんのひとり言だ
階段下のデッドスペースにトイレを配置。階段部分にのみ爽やかなストライプのクロスを貼って、オブジェのように見せてしまうアイデアは必見

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