建築実例

都会の視線を遮る、家族だけのおこもりハウス 

品川区の住宅地に静かに佇む、黒を基調とした3階建てのガレージハウス。

隣家が近く人通りも多い立地、そして「訪問セールスを避けたい」という夫人の想いから、

家づくりのテーマはプライバシーを死守する“外に閉ざす”プランになった。

 

「家の中に好きなものが全部あるので、できるだけ引きこもっていたい。

住んでいることを知られたくないぐらい」と夫人。

そこで建築士の中山さんが描いたのは、窓を最小限に抑え、外の視線を巧みにかわす住まいだ。

 

唯一の大きな開口部であるバルコニーは、ルーバーで目隠しして安心感を確保。

光と風を通しながら、プライバシーがしっかり守られ

住宅地の真ん中であることを忘れるほど、ゆったりとした時間が流れる。

夫人が植物やメダカの世話をしたり、夜になると夫のIさんが晩酌を楽しむ場所だ。

 

さらに、この家の心地よさを支えるのが「全館空調」の存在。

年中家中の温度が一定に保たれることで、日々のストレスが格段に減ったという。

「帰ってきた瞬間に気持ちがいいし、お風呂上がりの暑さ・寒さも感じません。

何より窓を開けずに暮らせるので、苦手な虫が入ってこないのが助かっています」。

 

リビングで暮らすペットのウサギと共に、ご夫妻は今日も快適な“おこもり生活”を楽しんでいる。

家族構成 夫婦
所在地 東京都品川区
本体価格 3037万円
敷地面積 68.88㎡(20.8坪)
延床面積 110.74㎡(33.4坪)
竣工年月 2022年11月

担当
中山 毅

シュッと見せる黒と縦のマジック
電動シャッターで開閉できるビルトインガレージ付きの住まい。外観はシックな黒。さらに中山さんの提案でサイディングを縦に張り、よりスタイリッシュな表情になった。 バルコニーの木製ルーバーがあたたかみを添えるアクセントに
光は上からいただく
プライバシーのために窓はできるだけ小さく、でも明るさは諦めない。3階へとのびる階段の上に窓を設けたことで、やわらかな光がリビングにふりそそぐ。夫人が選んだブルーのクロスが、光に照らされて空間の素敵な主役になった
ゆるやかにつながる家族の時間
16.5畳の広々としたLDK。リビング階段と天井の段差が、キッチン・ダイニングとリビングをゆるやかに分けてくれる。壁で仕切らないから、どこにいても家族の気配が感じられて心地いい
天井のデコボコをデザインの味方に
キッチンからリビングダイニングを見渡すこの眺め。「全館空調」の機械を収めるため、天井の一部はどうしても低くなるが、その天井の「凹凸」を逆手にとり、空間に「リズム」を生むデザインのアクセントにした
光がめぐるキッチン
やさしい木目調で統一されたナチュラルなキッチン。家の奥にある場所でも、いつも明るいのが自慢だ。その秘密は南側にある階段から取り込む光。階段の壁になったルーバーが、やわらかな光をキッチンまで届けてくれる
バルコニーから「ただいま」、湯船から「おかえり」
リビングの一部は開放感あふれる吹き抜けに。天窓と室内窓も設けることで、縦へのびやかな広がりが生まれた。その先にある4畳のプライベートバルコニーは、実はバスルームのすぐお隣。入浴中の夫人と、バルコニーで晩酌を楽しむIさんが、その日の出来事を報告し合うのが日課だそう
好きが詰まったアトリエ空間
ダイニングの傍らには、アーチで囲われた夫人のための特別な空間。ここでは趣味の刺繍に集中したり、人形の服を作ったりと、好きなことに没頭できる。広い部屋がなくても、机ひとつ分のスペースで「自分だけの空間」は作れるという、お手本のような場所だ
世界にひとつ、我が家のステンドグラス
4.5畳のコンパクトな寝室。左手にある黒枠の室内窓は、リビングの吹き抜けへとつながっている。シンプルな空間でひときわ目を引く美しいステンドグラスは、この家のために夫人がデザインした、世界にひとつのオリジナル作品
水まわりは、広いが正義
建築家の中山さんの「毎日使う水まわりは広い方がいい」という経験則から、ゆったりと設計された洗面室。カウンターは夫人のメイクコーナーも兼ねており、朝の忙しい時間も2人並んで使うことができる。壁一面に広がる可動式の造作棚も、暮らしやすさを考えた中山さんのアイデアだ
服の住所は、ぜんぶココ
夫婦の衣類をまとめて収納する、大容量のファミリークローゼット。コートやシャツなど、服の丈に合わせてハンガーバーの高さを変える工夫もされている。夫人が「外から帰ってきたらここで上着を脱いで、手ぶらで2階のリビングに行けるのがいい」と語るように、帰宅後の生活動線まで考え抜かれた設計
ガレージが、もうひとつの玄関
ガレージと玄関が中でつながるインナーガレージのプラン。車から降りたらそのまま1階のファミリークローゼットへ。上着や荷物を置いて手ぶらで2階のリビングへと向かえる、理想的な帰宅動線だ
我が家のトイレは気分が上がる
トイレの床はヘリンボーンのような斜め張りに。大胆なボタニカル柄のクロスと組み合わせることで、華やかで印象的な空間となった。壁に設けた小さなニッチは、雑貨を飾る楽しみが増える中山さんによる嬉しい提案
タイルとボウルに”きゅん”
「帰ってきたら、まず手洗い」という夫人の習慣にならい、玄関のすぐわきに小さな手洗いコーナーを設けた。花びらのようなユニークな形の手洗いボウルと、キラキラしたモザイクタイルは夫人が選んだお気に入りの組み合わせ。ゲストにも気兼ねなく使ってもらえて便利
玄関の奥ゆかしさ
玄関扉は通りから直接見えないよう少し奥まった場所に計画。プライバシーを守るこの設計が、家全体に落ち着きと安心感を与えてくれる。玄関ポーチの脇で、夫人が植えたささやかな緑が育っていくのも日々の楽しみのひとつ
おもてなしは足元から
玄関の六角形タイルは、床から壁の立ち上がりまで柄がぴったりと合っていて、丁寧な職人の技術と住む人へのおもてなしの心が感じられる

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