近所の賃貸住宅にお住まいだったYさん家族。親御さんから譲り受けたこの土地に、念願の「愛車ファーストの新居」を実現された。10年以上の付き合いという愛車のバイクは、マニア垂涎の希少な旧車。盗難リスクも高く、これまではしっかりとシートをかけ、さらに車の後ろに隠すように保管していたそう。「家の敷地内にとめていても、正直気が気じゃなくて・・・(苦笑)。ですので、バイクを室内保管できるプランが最優先でした」とのこと。こちらは28.2坪のいわゆる狭小地。限られた敷地にバイク専用のスペースを確保するには、優先順位をつけることが必要だった。ぜったいに譲れないもの、それほど重要じゃないもの。Yさんたちは、自分たちの価値観やライフスタイルを振り返った。「まずはバイクを置くスペース。洗車ができる庭もほしかった。それから子どもと一緒にBBQができる広めのバルコニー。その代わり寝室はベッドが置ければいいよね、とか。リビングに全員揃う時間って意外と少ない、実はそんなに広くなくていいんじゃない?とか。フラットに考えると、重要なものは限られていました。LDKは12.5畳。すごく広いわけじゃないけど、吹き抜けの開放感も手伝ってすごく気持ちいい。掃除もラクだし、このサイズが自分たちにはちょうどいいんです」とYさん。バイクの定位置は、玄関を兼ねる土間ガレージに決定。シートで隠す必要もなく、いつも堂々とした姿を見せてくれる。
2台のバイクを置ける室内の土間ガレージは、玄関も兼ねて約11畳の広さを確保。手入れの道具を床に広げて、心ゆくまでメンテナンスに没頭できる。夫人が希望されたシューズインクロークは、たっぷりの靴をしまえるだけでなく、雨で濡れた上着を掛けておく用のハンガーラックも設置。さまざまなシチュエーションを想定して造作した。内装に使った上品なパープルのクロスは、汚れが目立ちづらい点もお気に入り
日当たりを考えてLDKは2階に配置。12.5畳ほどだが、吹き抜けの効果で実際よりも広く感じられる。耐震等級3を支える構造梁もインテリアの一部のようだ。2.6畳の小屋裏収納は漫画の収納スペース。頻繁に行き来することはないと考え、はしごでアクセスするプランにした
デザインとメンテナンスの手間を考えて、真っ黒なガルバリウムの外観に。耐震構造上、窓の配置や大きさにはさまざまな制約があったが、山村さんと何度もシミュレーションして現在の姿になった。バイクにまたがったまま室内に入れるように、フルオープンできる親子扉を採用している
シンプルが好みの夫人が選んだのは、オールステンレスのキッチン。サイズをミリ単位で調整でき、収納スペースをカスタムすることもできる。「オールステンレス&オーダーキッチンって、探すと意外となくて・・・。山村さんが教えてくれたこのメーカーはタインさんの標準仕様ではありませんが、自由に持ち込んでいいとのこと。こういった柔軟さもうれしいですね」。正面の窓は通りに面しているため曇りガラスを採用。外の視線を気にせず、のびのびとくつろぐことができる
玄関ホールはナラカシのフローリングと、階段を引き立てるシンプルなグレーのクロス。バイクの雰囲気に合うレトロなスイッチは、山村さんが提案したもの
洗面室は3.5畳とやや広め。清潔感のあるフロアタイルを敷いており、正面のバルコニーから取り込んだ洗濯物はここで一気に畳むそうだ。右側はたっぷりのファミリークローゼットで、その流れでしまえるようになっている。「以前の家はリビングの奥がベランダだったので、洗濯物がリビングに置きっぱなしになることも(笑)。この家は“干す、畳む、しまう”がまとまっているので、散らかりようがないんです」
アーチの垂れ壁で仕切ったファミリークローゼット。天井いっぱいまで無駄なくスペースを使い切り、家族の衣類をすべて収納できる
リビングと洗面室の両方からアクセスできるバルコニーは、日当たりのよい特等席に配置。「子どもに楽しい体験をさせてあげられる場所に」と広めに確保。みんなでBBQを楽しんだり、ただコーヒーを飲むだけでも豊かな時間になる
ダイニングテーブルやヴィンテージチェアなど、お手持ちの家具をあらかじめヒアリング。それに合わせてプランや内装のデザインを提案していった
明るい2階LDKの光が、スケルトン階段を通って1階フロアに行き渡る。木とアイアンのシンプルなテイストは家族の好みだ
奥に行くにしたがって徐々にフローリングの幅が広くなっているプラン。「床とフローリングがずっと平行・まっすぐだと、確かに広くは見えますがやや単調になってしまいます。それなら少し角度をつけてユニークな印象にしたいなと。何よりバイクの出し入れがラクになります」と山村さん
こだわりのペンダントライトを取り入れたトイレ。色数を最小限に抑えて、すっきりと洗練された雰囲気に
「寝るだけの部屋は小さくていい」と割り切って寝室は4.5畳。窓は通り側に面しているため、外と視線が合わないように高さを計算した。1畳の収納は意外とたくさんのものをしまえるので便利