生まれ育った築55年の自宅を、このたび建て替えたKさん。
旧居は母屋である平屋に、子どもたちが過ごす二階建てを増築した造り。
全部で部屋数は11、広い土間もあった。
すでに子どもたちが独立し夫婦と愛犬1匹で暮らす今となっては、やや持て余すサイズである。
「とにかく掃除が追い付かなくて・・・。やってもやっても終わらないので、
少しやる気を失っていました(笑)」と夫人。
築55年ともなれば、建物の老朽化も避けられない。
冬はすきま風に悩まされ、朝起きると温度計が“3℃”という日も珍しくなかった。
TAINN DESIGNが描いたのは、家族の「今」の暮らしに合わせたプラン。
まずは必要でない個室をなくして、夫婦と愛犬それぞれの自室と来客用の和室、応接室だけに。
一方LDKは30畳の広さを確保し、近所で暮らす3人の子どもと6人の孫が
全員集まってもゆったり過ごせるようにした。
また庭側の大きな開口部からたっぷりの光を取り込み、保温効果の高い室内に蓄積。
真冬の寒い日でも暖房機器に頼らず過ごせるのは、住性能が格段にアップしたからだろう。
「朝の“ひやっ”とするストレスから解放されました。子どもたちも少し前に家を建てたのですが、
この家が一番暖かいって言います。また夏は夏でとても涼しく、一年中断熱性の高さを実感しています」(Kさん)
威風堂々
風格のある外観デザイン。「和でもなく、洋でもなく」そんな漠然としたオーダーを紐解きながら、きちんとカタチにしていった。リビングに面したL字型のウッドデッキでは、子どもや孫たちとBBQを楽しむ予定
空間にメリハリをつける
広々とした空間ゆえ、あえてリビング、ダイニング、キッチンをほどよくゾーン分けしたのがポイント
直線距離が一番スムーズ
キッチンとダイニングテーブルが一直線に並ぶ動線は、夫人のオーダー。ぐるっと回り込む必要がなく、そのままスッと配膳できるのがとにかく便利だそう
クロスを組み合わせる
大開口が開放的なリビング。色使いは夫人のセンスで、グレーのタイルとネイビーのクロスがポイント。壁付のテレビボードはあれこれ悩んだうえで、壁になじむ白を選んだ
おもちゃもすっきり
キッチンは両側にたっぷりの収納が備わったタイプ。孫たちのおもちゃや日用品など、細々したものをすっきりしまっておける。奥の和室はLDKの一部として普段使いできるように。扉を閉めると独立した個室にもなる
奥行きのあるパントリー
アーチの奥はたっぷりのパントリー。収納ボックスがぴったり収まるように考えられている。手前にある木質感のあるルーバーが、目隠しと空間のアクセントを兼ねている
“和”すぎない和室
和に偏り過ぎない、琉球畳を取り入れた和モダンな雰囲気。欄間は旧居から持ってきたものをそのまま活かした。和紙のようなクロスが夫婦のお気に入り
木のぬくもりを随所に
広々とした玄関土間。間接照明を埋め込んだ正面のエコカラットが特別な空間を演出している
古き良き応接室
専用の玄関から出入りする来客用の応接室。広々とした土間がポイントだ。お客さんからの見え方も意識しながら、玄関とアプローチのデザインを決めていった
クローゼットは洗濯動線の内側に
たっぷりしまえるファミリークローゼット。洗濯室の隣に配置するなど、洗濯動線にも気を配った
サッと室内干し
TAINN DESIGNで建てた娘さんの新居を真似た洗面脱衣室の物干しバー。シックな洗面台のデザインに合わせて黒いアイアンに
トイレの中も和モダンに
トイレは木の風合いと抹茶色のクロスを組み合わせた和モダンテイスト。ちょっとしたものを置ける造作カウンターが便利
老舗旅館の佇まい
建築士と職人が連携して作り上げた庭園。樹齢100年の松の木と石畳のアプローチが由緒ある旅館のような雰囲気を醸し出している