2人そろって多趣味なご夫婦。Mさんは野球にゴルフ、そしてキャンプ。夫人はファッションや手芸など。決して狭くない旧家のマンションが、趣味の道具やコレクションでそろそろいっぱいだった。そんな中テレワークがスタート。家で過ごす時間が増えるにつれ、一戸建てに気持ちが傾いたのはMさんの方だった。「妻はマンション暮らしを気に入っていて、実は乗り気ではありませんでした。当初は立地重視で建売も見ていましたが、グラス一つにも妥協しない自称『オタク』の彼女をその気にさせるには、存分にこだわれる注文住宅にしようと(笑)」とMさん。読み通り、すっかり家づくりに没入していった夫人。希望はごまんとあったが、真っ先に考えたのは意外にも「性能」だったそう。「とにかく高気密・高断熱。親戚が同じ2階リビングで夏の暑さが凄いと聞いていたので、できる限り断熱材を入れてもらいました。よほどの猛暑日でない限り、窓を開ければエアコンなしで過ごせますよ。それから耐震性。構造計算と最高等級の3は絶対でした。互いの実家が近いので、いざという時は親たちも集まれる『シェルター』になればと。猫もいるので(避難所に連れていけないな・・・)という思いもありました」と夫人。高耐震=プランが制限され採光が犠牲になりがちだが、吹き抜けや天窓、明り取りなど、建築士の中山さんの提案も冴えわたり、心地よい開放感に満ちた住まいが完成した。
中山さんの提案で2階リビングには室内窓を設置。隣接する階段に光を届ける役割。そして1階から上ってくるときに、徐々に雰囲気のよいリビング照明が視界に入る演出だ
「天井を高くしたい」という夫人の要望を踏まえて、リビングは2階に配置。耐震構造のため壁面積が多めだったり、住宅地なので比較的コンパクトな窓であるが、吹き抜けの効果で心地よい開放感に包まれている
生活感のない洗練された外観デザイン。汚れが目立たないシックなグレーと、手塗りのような素朴な質感が魅力。住宅地なので周囲の視線が気にならないよう、窓の配置やサイズなどにも配慮している
デザインとプランの柔軟さで選んだ「キッチンハウス」のシステムキッチン。モルタルとよく似た表情のメラミン素材は、見た目の美しさはもちろん、耐久性や衛生面(汚れの落ちやすさ)も秀逸。シンク下はごみ箱専用スペースにするなど、使いやすさにもこだわった。板張り天井はさらに色を塗って深みを出したり、タイルの目地の色を悩みに悩んだり・・・何一つ妥協のない空間になっている
キッチンカウンターの下はたっぷりの収納スペース。リビングで使う細々とした日常品をすっきり隠せるので便利だ
キッチンカウンターの上には、お気に入りのペンダントライトを吊るしたり、植物をハンギングできるように専用のレールを取り付けている
キッチン横に作った小さなワークスペースは、普段夫人がテレワークをする場所。お子さんが帰ってきたらここで宿題をして、夫人が夕飯の支度をしながら教えたりもする
ガラスの建具や天窓から積極的に光を取り込むプラン。リビングと一体化したルーフバルコニーが奥行きを生み、空間にさらなる広がりをもたらしている。ちなみに扉は夫人が購入して持ち込んだもの。上質なナラカシのフローリングは「硬くて足触りが気持ちいい」と友人にも好評だ
玄関には明り取りの窓を設置。照明ではなく自然光で明るさを確保するプランだ。マンション時代の「1人が靴を履いていると、たちまち玄関が渋滞する」という教訓を生かし、全員が一緒に脱ぎ履きできるL型のプランに。「子どもが頑張って靴を履いている間も、ちゃんと待ってあげたくて」と夫人。ちなみにロールスクリーンで仕切ったシューズインクロークは、天井ギリギリまで靴をしまえるようになっている
グリーンのアクセントクロスが映える寝室。好きな絵や雑貨を飾れるちょっとしたギャラリーも。緩やかに壁で仕切った書斎は、カウンターや書籍の量にあわせた本棚を造作。Mさんもテレワークがはかどっているそう
寝室と廊下の両方からアクセスできる、ウォークスルータイプの大型クローゼット。ショップのようにおしゃれな服がずらりと並ぶ、洋服好きにはたまらない空間
天窓から光が取り込まれる、明るい洗面コーナー。持ち込んだメラミンカウンターと洗面ボウルを組み合わせオリジナルで製作したものだ。(清潔感を出すために、あえて無機質に)と考えた夫人は、サブウェイタイルの目地にキッチンとは異なるパキっとした色を選び、コントラストを強めた
「トイレを少し冒険してみては?」という中山さんの提案で、家じゅうでもっとも高価なタイルを思い切って採用。トイレットペーパーホルダーやハンギングタイプの照明など、一つひとつにこだわりが垣間見える
脱衣室には家族分のパジャマやタオルをしまえる収納を造作。その下は扉で隠れる愛猫のトイレコーナーになっている
二間つづきの子ども部屋は、いずれセパレートすることも可能。北欧デザインのような水色のクロスはお姉ちゃんが選んだ。