ホテルに身を置いているかのような、軽やかで洗練された空気。
Yさん邸は、日常の雑多な気配を感じさせない澄んだ心地よさに包まれている。
この寛ぎを生み出しているのは、「生活感を丁寧に整える」という設計の工夫。
象徴的なのが、グレーの壁で仕切られたテレビ背面のウォークスルー収納である。
配線や電子機器、日用品から書類に至るまで、散らかりがちなものにきちんとした居場所を用意。
生活の道具を視界から消したことで、家族が集まるメインスペースには、
シックな黒で仕立てられたキッチンや家具、そして吹き抜けから注ぐ柔らかな光だけが残された。
隠すべきものを包み込み、見せたい光や広がりだけを美しく引き立てる。
そうして視界のノイズをなくした空間だからこそ、暮らしのふとした瞬間に心がすっと落ち着く。
静かな玄関で一呼吸置くときも、お気に入りのキッチンで料理に向き合う時間も、
隠れ家のようなロフトで本を開くひとときも。
目の前のことに心地よく没頭できる理由が、この住まいには確かにある。
さらに、脱衣室からクローゼットへまっすぐ繋がる配置や、
帰宅してすぐに使えるホール洗面など、日々の挙動をスムーズにする設計も抜かりない。
こうした細やかな気配りの重ね合わせが、住まい全体にゆとりをもたらしている。
もちろん、暮らしに必要なものを無くしたわけではない。
すべてに居場所をつくり、魅せるもの、隠すものを丁寧に描き分ける。
そうしてできたのは、ただ生活感を削ぎ落としただけの家ではなく、
暮らしながらも景色が乱れない家だ。
日常をきちんと営みながら、目に入るものはいつも美しく。
そんな工夫の重なりが、ホテルライクな心地よさを作り上げている。
「つくる」「並べる」「片づける」をまっすぐ
夫人がショールームで気に入ったグラフテクトのキッチンを採用。作業スペースを広く確保し、ダイニングテーブルを横並びに配置したことで、配膳や後片付けもスムーズ
階段までインテリアになる
キッチンから眺めると、インテリアの一部のように見える階段。アルミ製の手すりとガラスの腰壁を採用し、視線を遮らないつくりに。上下階をつなぐ場所にも、軽やかな印象を与えている
リビングの上に、もうひとつの居場所
白を基調としたLDKに、キッチンやテレビ背面の壁、手すりでアクセントを加えた空間。ロフトとはガラス越しにつながり、下にいる家族の気配を感じながら、それぞれの時間を過ごせる
街並みの中でも輪郭は静かに
黒のサイディングをベースに、木目調の縦ラインをアクセントにした外観。落ち着いた色調の中に素材の表情を加え、シンプルながら印象に残る佇まいに。ガレージ部分は現在、自転車置き場として使われている
家事の手を止めず「起きてー」
天窓から光が降り注ぐキッチンは、通路にもゆとりを確保。キッチンのすぐ近くに子ども部屋を配置し、朝食をつくりながら子どもたちを起こせるようにした。以前の住まいでの「何度も起こしに行く」という負担を解消した間取りである
窓を高くすると空に近づける
住宅に囲まれた敷地でも十分な採光を確保できるよう、勾配天井を活かして南面に大きな窓を配置。高い位置から入る光が、2階のLDKを明るくしている
表はすっきり、裏はしっかり
テレビ背面のグレーの壁の向こうに、通り抜けできる収納空間を設置。リビング側からは見えない場所に、日々使うものをまとめて収められる。空間のアクセントになる壁と収納をひとつにまとめた工夫だ
生活感の裏口
テレビの配線やWi-Fiルーターなどの電子機器、日用品、書類をまとめて収納。壁にはマグネットボードも設け、学校のプリントなどを貼っておける。収納するものに合わせてサイズを調整し、使い勝手にも配慮した
帰宅後のひと手間を玄関で完結
帰宅してすぐに手を洗えるよう、玄関ホールに洗面台を配置。当初の小さな手洗いコーナー案から、掃除のしやすさなども考慮して現在の形に。3人並べるほどの広さがあり、朝の身支度にも活用されている
家族も洗濯物も遠回りさせない
浴室、脱衣室、ウォークインクローゼットを近接させ、「洗う・乾かす・畳む・しまう」が一か所で完結する動線に。洗濯物を家の中で運ぶ距離を短くし、毎日の家事負担を軽減している
玄関が広い。それだけで、帰るのがうれしい
25坪の敷地とは思えないゆとりを確保した玄関土間とホール。特にこの広い玄関プランが、YさんがTAINN DESIGNを選ぶ決め手のひとつになった。限られた敷地でも、玄関にしっかりと余白をつくっている
わが家の小さなギャラリー
玄関ホールの壁を活かしたギャラリースペース。子どもが描いた作品やインテリア小物を飾って楽しめるよう、壁面に余白を残した。毎日通る場所だからこそ、好きなものを目にできる場所にした
リビング上にちょうどいいこもり場
勾配天井を活かしたロフトは、収納だけでなく趣味を楽しむ場所としても活用。リビングの窓から光が届き、ゲームや読書を楽しめる。家族の気配を感じながら、ほどよくこもれる場所だ。本棚は家族自身で設置した
家の中に仕事モードのスイッチ
寝室の一角に設けたYさんの書斎。壁でゆるやかに仕切ることで、寝室とつながりながらも集中しやすい場所にした。奥には可動棚を造作し、本や書類も収められる
毎日使う場所こそ気を抜かない
グレーのクロスとステンレス水栓で、室内をすっきりとまとめたトイレ。窓を設けているため明るさを確保しながら、換気もしやすい。コンパクトな場所にも、家全体のデザインコードを通している
寝る前の一冊がすぐそこに
子ども部屋には、枕元に文庫本が収まるサイズのニッチを造作。読みたい本を手の届くところに置いておける、小さな収納である
使い方から考えた子ども部屋
もう一つの子ども部屋には、独立した机を置かなくても使える造作カウンターを設置。正面にはマグネットボードを備え、プリントやメモ類をまとめられるようにした。家具を増やさず、必要な機能を空間に組み込んでいる
最後にひとつ、赤を置く
落ち着いた色調でまとめた外観に、Yさんの希望で赤いポストを採用。モノトーンのファサードに一点の色が加わり、家の顔となる場所にさりげないアクセントを添えている