「愛車を守るビルトインガレージ」。 「家族みんなで過ごす広いリビング」。
当初、Sさんの希望はその二つだった。
南北に細長い土地という制約がある中で、建築士の鶴田さんが導き出した答えは、
2階に家族のメインスペースをまとめ、1階に愛車の居場所を組み込むプラン。
階段を上がると、天窓から柔らかな光が降り注ぐ開放的なリビング。
街からの視線を気にすることなく、家族でゆったりと寛げる場所だ。
夫婦で広々としたキッチンに立ち、会話を楽しみながら料理。
ただそこにいるだけで、心がすっと解けていくような穏やかな時間が流れている。
ふと見上げると、リビングの上にはロフトの姿。
吹き抜けを介してつながり、互いの気配や笑い声が心地よく届く場所。
いまはSさんのワークスペースとして、そして時には子どもたちの秘密基地として。
いずれ成長していけば、静かに宿題と向き合う場所になるのかもしれない。
家族の暮らしや関係性が変わっていっても、
その時々に合わせて自由に居場所を変えていける頼もしさがある。
そして1階には、もうひとつの希望だったビルトインガレージ。
室内と直接つながるその場所は、安心だけでなく、
大好きな愛車をいつでもそばに感じられる贅沢を与えてくれた。
守りたいものには、ちゃんと居場所を。
家族が集まる場所には、のびのび過ごせる余白を。
二つの希望を丁寧に繋ぎ合わせた結果、
家族が自然と集まり、そしてそれぞれの時間を楽しむ住まいとなった。
集まる場所の上に、もうひとつの場所
リビングの上にロフトをつくり、縦方向にも居場所を広げた。勾配天井によって視線が上へ抜けるため、限られた敷地でものびやかな印象に。下では家族がくつろぎ、上では仕事をしたり遊んだり。別々のことをしながらも、お互いの気配を感じられる空間になっている
見上げるたび、家が少し広くなる
ダイニングから見上げると、木目の勾配天井がそのままリビング上部へ伸びている。高さの変化が視線を上へ導き、床面積だけでは感じにくい広がりを生み出している。キッチンはフルフラットタイプとし、ダイニングとの境目をつくらず、家族が同じ空間で過ごせるようにした
みんなで囲めるキッチン
オリーブグリーンのキッチンは、色だけでなく使い勝手にもこだわった。カウンター間の通路を広めに確保し、二人が同時に作業しても動きやすいようにしている。食洗機も備え、家族で料理をしたり、ホームパーティーを開いたり。人が集まることまで考えたキッチンだ
守りたいものは、きっちり隠す
「愛車を守れるガレージがほしい」という希望から、1階にビルトインガレージを組み込んだ。建物の中に駐車スペースを取り込むことで、雨風から車を守りながら、限られた敷地も有効に使っている
青い家と、赤い愛車
青いサイディングに白い窓枠や雨どいを合わせ、サーファーズハウスを思わせる外観に仕上げた。ガレージの開口から見える赤い愛車が、青い外壁との鮮やかなコントラストをつくる。車を収める場所まで建物のデザインとして考えた、Sさん邸らしいファサード
今の暮らしにも、これからの暮らしにも
ロフトは、仕事場だけに用途を限定していない。今はワークスペースや遊び場、収納として使い、将来は子どもの宿題スペースとして使うことも想定している。物干しパイプも備えているため、洗濯物を一時的に掛けることもできる。家族の暮らし方に合わせて、役割を変えていける場所だ
仕事は少し高いところで
当初は書斎を希望していたSさん。その代わりにロフトの一角をワークスペースとして活用するプランにした。リビングとは吹抜けでつながっているため、完全に閉じた仕事部屋ではない。仕事をしない時間には別の使い方もできる、暮らしに合わせて変化する場所だ
本のある場所には、ついつい長居したくなる
ロフトの壁面には、造作の本棚を設置。床から天井まで本が並ぶことで、ちょっとした図書室のような雰囲気が生まれている。収納のためだけに設けた場所ではなく、本を手に取ってそのまま過ごせる場所。家の中に、落ち着いて自分の時間を楽しめる居場所ができた。
晴れた日は、ここまでリビング
2階LDKの南側には、広々としたバルコニーを設けた。洗濯物を干す場所でありながら、リビングの延長としても使える広さがある。椅子を出してくつろいだり、家族で外の空気を楽しんだり。日常の中に、気軽に外へ出られる場所ができた
車を降りたら家の中
1階の寝室とビルトインガレージを直接つなげたことで、車から降りてそのまま室内へ入れる。雨の日に濡れずに帰宅できるのはもちろん、買い物帰りに荷物を抱えているときにも便利。毎日の「ただいま」を少しラクにしてくれる、実用的な動線である
玄関に置きたいものは、けっこう多い
靴だけでなく、ベビーカーなどの大きな荷物まで収められるシューズインクローゼット。外から入ったあと、そのまま収納を通って室内へ抜けられる2WAY動線にしている。さらにスリット窓から光が入るため、収納量を確保しながらも閉じた印象にならない
「しまう」までが家事だから
LDKの一角に設けたファミリークロークには、家族の衣類や荷物をまとめて収納。バルコニーで干した洗濯物を、そのまま近くの収納へ運べる配置になっている。「洗う・干す・しまう」を2階でつなげたことで、洗濯のために何度も階段を往復する必要がなくなり、片づけもスムーズになった
毎日使うから、毎日気持ちいい
木の表情が美しい洗面台は、室内の雰囲気に合わせて素材を選んだお気に入りの場所。洗面ボウルまわりには小物を置ける余白をつくり、日々の身支度もしやすくしている。上部にはハイサイドライトを設け、視線を気にせず自然光を取り込めるようにした
水回りは近いほうがいい
グレーを基調に、シンプルに仕上げたトイレ。脱衣室、洗面室と近い位置にまとめることで、水回りを使うときの移動をコンパクトにしている。2階にLDKと水回りを集めたこの家では、家事や身支度を同じフロアで済ませられることも、毎日の過ごしやすさにつながっている