建築実例

やわらかい光につつまれる家

「北側採光」と聞くと、少し意外に感じるかもしれない。

 

Sさん邸が向いているのは、南ではなく北。

そこには公園があり、その向こうには空がひらけている。

南側はアパートが建つため、あえて北側を大きく開いたのだが、

この選択が大正解。

「入ってくる光がとても柔らかくて、一日中一定の明るさが保たれるのが快適です」とSさん。

強い日差しが差し込むというより、部屋全体がふわっと明るい。

リビングで過ごす時間も、窓の外に公園を感じながら、落ち着いて過ごせる。

 

同じく北側に面したバルコニーも、お気に入りのスポット。

子どもはプールで遊ぶ。大人はその横でコーヒータイム。

それぞれ好きなことをしながら、同じ時間を共有する。

近いうちにはデッキをつくる予定だとか。

食事をしたり、もう少し長く外で過ごしたり。今とはまた違う楽しみが生まれそうだ。

 

1階に降りると、今度は玄関の広さが効いてくる。

ベビーカーや、買い物した荷物をいったん置く場所。

旅行から帰ってきた大きな荷物も、すぐに片づけなくていい。

「玄関を入ってすぐの景色がお気に入り」というSさん。

正面には造作階段とFIX窓があり、その向こうには植栽が見える。

夜にはライトアップされ、帰宅したときにまず目に入る景色になる。

ものを受け止める玄関と、景色を楽しむ玄関。その両方が、ひとつの場所にある。

 

収納も同じ考え方。ガレージ、パントリー、ロフトと、

暮らしの中で増えていくものをしまう場所をあらかじめ用意した。

だから、家族が長い時間を過ごすLDKはいつもすっきりしている。

 

明るさも、外との距離も、荷物の置き場所も。

どれも「こうするべき」という正解から考えたのではなく、

家族がどう過ごしたいか、から導き出した住まい。

 

北側の窓から入る光のように、強すぎず、でも一日を通してちゃんとそこにある。

Sさん邸には、そんな暮らしの心地よさがある。

家族構成 夫婦+子ども2人
所在地 東京都
本体価格 3,000万円~3,499万円
敷地面積 101.43m2 (30.6坪)
延床面積 91.26m2 (27.6坪)
竣工年月 2025年4月

担当
鶴田 慎一郎

家事をしながら、暮らしが見える
キッチンに立ったまま、リビングから北側のバルコニーまで視線を通せるレイアウト。料理や洗い物をしながら、家族がどこで過ごしているかを自然に把握できる。さらにリビング脇のドアから水回りへつながるため、食事・家事・身支度まで2階で完結する暮らし方ができる
好きなキッチンなら、料理はもっと楽しい
白をベースにしたLDKの中で、黒のペニンシュラキッチンが視線を集める。Sさんが希望したのは、存在感のある大きなキッチン。その要望をかなえながら、照明やシーリングファン、階段の手すりにも黒を取り入れ、キッチンだけが突出しないよう空間全体をつないでいる
一緒に動けるキッチン
キッチンの通路幅を広めに取り、二人が同時に作業できるよう計画。朝食をつくる横でゴミ出しの準備をする、といった動きも重ならない。奥にはパントリーを設け、食品やキッチン家電をまとめて収納。壁面はマグネット対応で、メモや学校からのプリントも貼っておける
見せたいものだけが、リビングに残る
リビングの上に設けたロフトが、高い天井と大きな開放感をつくっている。以前の住まいで悩みだった収納不足にも、ここがひと役。使用頻度の低いものやかさばる荷物を上へ逃がせるため、家族が集まるリビングをすっきり保ちやすい
外からの景色にもこだわる
外壁の色は、複数の3Dシミュレーションを見比べながら検討。最終的には、公園側から見たときの印象を重視して白を選んだ。そこに軒天やシャッターの木目調を組み合わせ、白一色になりすぎない、自然な雰囲気の外観に仕上げている
迎えてくれるのは、ものではなく景色
玄関ドアを開けると、正面に見えるのは造作階段と、その先の植栽。FIX窓を介して外の緑を取り込むことで、単なる通路ではなく、家に入った瞬間に景色を楽しめる場所になっている。夜は植栽が照らされ、帰宅する時間帯によっても違った表情が生まれる
毎日見るものだから、すっきりと
1階の居室には、天井近くまで高さを取ったハイドアを採用。一般的な建具の上にできる垂れ壁がないため、壁や天井を横切る線が少なく、室内がすっきり見える。部屋としてしっかり区切りながら、視覚的には伸びやかな印象を保てる仕様だ
最後のチェックは玄関で
ベビーカーを置いても余裕がある、ゆったりとした玄関土間。Sさんの「大きな姿見を置きたい」という希望から、壁一面に特注サイズの鏡を設けた。玄関脇の勝手口はガレージにつながっており、外からだけでなく土間からも直接アクセスできる
「ちょっと待って」が、ひとつ減る
洗面室と脱衣室の間に建具を設け、必要に応じて空間を分けられるようにした。誰かが入浴している時間でも、別の家族が洗面台を使える。洗面台の上にはハイサイドライトを配置し、視線を守りながら自然光を取り込んでいる
すっきりしているには、理由がある
グレーと木目を組み合わせ、LDKとは少し表情を変えた落ち着いたトイレ。収納は正面から見えにくい壁の奥に納め、必要なものだけをすぐ取り出せるようにしている。便器にはタンクレスを選び、見た目のすっきり感と掃除のしやすさを両立した
壁いっぱいに、子どもの今を
リビングの壁にはマグネットが付く下地を採用。誕生日の飾りや子どもたちの作品など、その時々の思い出が並ぶ。家を完成した状態で保つのではなく、暮らしながら少しずつ景色を変えていけるのがこの場所のいいところ

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