建築実例

平屋のような、2階建てのような家

南側の窓から差し込む光が、広々としたフロアをどこまでも照らし出す。

その明るさの中を元気に走り回るお子さま。

一見するとゆったりとした平屋。けれどもこのS邸には巧みな仕掛けが隠されている。

 

夫婦が希望したのは、有り余るほどの収納力と、家族がのびのびと過ごせる大空間。

その想いに建築士は「2階建てのような、平屋のような」と表現される斬新なプランで応えた。

 

核となるのが居住空間のゾーニング。

家族が集うLDKは1階にめいっぱい広げ、平屋のような開放感と暮らしやすさを実現。

一方、プライベートな居室は2階にまとめることで、各々の時間を大切にできる。

 

そしてこの家の収納力を飛躍的に高めているのが、平屋部分の上に設けた「グルニエ」の存在。

延床面積に算入されない、いわば“ボーナス空間”。

LDKとは別の専用階段でのみアクセスできる、巨大な隠れ収納である。

 

グルニエに加え、階段下などのデッドスペースも余すことなく活用。

おかげでかつてリビングを占領していたお子さんのおもちゃも、

すべてあるべき場所に収まり、生活感のない洗練された空間が保たれている。

 

キッチンからフロア全体を見渡すことができ、

遊んでいるお子さんの様子がひと目でわかる安心感も。

革新的なプランニングが、家族の毎日にゆとりと笑顔をもたらした。

家族構成 夫婦+子ども1人
所在地 東京都三鷹市
本体価格帯 2,500万円~2,999万円
敷地面積 109.02㎡(32.9坪)
延床面積 88.83㎡(26.8坪)
竣工年月 2023年11月

担当
三浦 さつき

光が最高のインテリア
南側の窓から心地よい光が差し込むリビングは、Sさん好みのホテルライクな空間。昼は明るい陽光が、夕方は温かみのある光が室内を優しく照らし出す。開放感あふれるこの場所が家族の心と体を癒してくれる
夫婦合作のデザイン
「できるだけ他と被らない外観に」。そんな夫婦の願いを叶えたのが、まだあまり使われていないという新商品の外壁材だ。Sさんが選んだライトグレーのサイディングに、夫人がこだわった白いモルタルを組み合わせ、夫婦合作で唯一無二のデザインが完成。制震ダンパーや太陽光パネルも備え、安全性もばっちり
昼と夜、ふたつの顔
リビングの壁にはSさんがオーダーしたエコカラットを採用し、高級感と落ち着きをプラス。壁の奥には間接照明が巧みに埋め込まれており、夜になると昼間とは違う美しい陰影が浮かび上がる。光と影が織りなすアートな空間だ
片付く家理由がある
ダイニングテーブルをキッチンと横並びに配置したことで、食事の準備や後片付けが驚くほどスムーズ。さらに階段下を活用したリビング収納が、日用品のストックを一手に引き受け、いつでも片付いた空間をキープしてくれる
色で空間を仕切る
キッチンは白と淡いグレーで明るく、奥のリビングは少し濃い目のグレーで落ち着いた雰囲気に。壁紙の色を少しずつ変えることで、壁やドアで仕切らなくても、空間の役割をさりげなく分けている。色のグラデーションがもたらす心地よいメリハリ
北側の光も味方につける
階段の吹き抜け部分にも高窓を配置し、北側のやわらかい光を余すことなく取り込んでいる。家の中のどこにいても薄暗さを感じさせないための工夫だ
未来のための可変空間
LDKに隣接する小上がりのタタミコーナーは、木調ルーバーや下がり天井など、建築士・三浦さんの独創的なアイデアが光る空間。床下は大容量の収納で、お子さんの服やおもちゃがぎっしり。今は遊び場として、将来的には書斎や客間としても使える変幻自在のスペースだ
気配が届く秘密基地
リビングと吹き抜けでつながるグルニエは約6畳のボーナス空間。今はお子さん専用の遊び場として大活躍している。階下にいても、ここで遊ぶお子さんの気配をいつでも感じられる。家族がゆるやかにつながる安心の設計だ
乾いたら、そのまま、ポン!
洗面室と脱衣室をあえて別々の空間に。家族の誰かがお風呂に入っていても、気兼ねなく洗面台を使えるのが嬉しい。洗濯機のすぐ横に収納を置けば、乾燥機から取り出したタオルや下着をその場でしまえる。日々の家事を楽にする賢い動線設計だ
廊下のミニキッチン
2階廊下には造作の手洗いを設置。コンセント付きなので、バルコニーでお茶をする時などにもお湯を沸かせて重宝しているそう。正面の壁をなくし、大きな窓からの光をダイレクトに取り込むことで、廊下とは思えないほどの明るさを実現した
北欧気分のクローゼット
2.7畳のファミリークローゼット。壁には夫人が選んだ北欧テイストのクロスをあしらい、毎日のお着換えが楽しくなるような明るい空間に仕上げた
思い出を飾るギャラリー
玄関まわりには豊富な収納スペースを確保し、いつもすっきりとした状態をキープ。壁に造作したニッチは、ガラス板とアクセントクロスを組み合わせた、こだわりのディテール。思い出の品を飾る家族の小さなギャラリーだ
トイレはもっと美しくなる
トイレの奥には、掃除道具やトイレットペーパーのストックを隠してしまえる、便利な収納スペースを。生活感の出やすい場所だからこそ、すっきりと見せる工夫が光る。このアイデアは夫人がSNSで見つけたもの
「なぜだか気持ちいい」のカラクリ
キッチン背面の天井高、収納扉、階段入口の開口部・・・横の線をピシッと揃えたのは三浦さんのこだわり。そういった細かい部分の積み重ねが、空間全体の「なぜだか、気持ちいい」を創り出す

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