28.8坪のコンパクトな土地に建つHさんのお住まい。
周囲に家が迫る“狭小地”という条件の中で、どうしたら明るく、のびやかに暮らせるか。
試行錯誤の末にたどり着いた答えが、家の真ん中に設けた坪庭だった。
「家全体に光が届くようにしたくて、いろいろ調べていく中で出会ったのが坪庭のアイデア。
コの字型に囲むように配置したら、玄関と一体感も出て、空間に奥行きが生まれたんです」とHさん。
視線の抜けや光の取り込みだけでなく、自然とのつながりがほどよく感じられるこの小さな庭は、
暮らしの中心として大きな役割を果たしている。
またH邸は、ご夫婦それぞれのスタイルに合わせた仕事場を用意。
地下室のような静けさが好きな夫人には、秘密基地みたいな土間スペース。
少し気分屋だというHさんには、2.5畳のこもり感ある書斎にくわえて、
リビングの窓際、ダイニングの造作カウンター、そして坪庭・・・と、
その日の気分で選べるようにたくさんの選択肢を設けた。
「今日はどこでパソコン開こうかな、って選べるのがいいんですよね」とHさんは笑う。
設計を担当したのは建築士の中山さんと三浦さん。
たくさんのリクエストを聞きながらも、「これはちょっとおすすめできません」と
きちんと伝えてくれるプロフェッショナルな姿勢に、安心して家づくりを任せられたという。
どこにいても、自分らしくいられる。
広さ以上に“心地いい居場所”がたっぷり詰まったお家が完成した。
素材で遊ぶ、外観のリズム
モルタル吹付けとサイディング、木を組み合わせた外観は、同社のモデルハウスを参考にした。庭の駐車スペースはタイヤ跡が目立ちづらい「洗い出し」、家族が歩くアプローチ部分は柔らかい「ゴムチップ」と、目的ごとに素材を使い分けている
ひとつ上の、しまえる遊び場
リビングに設置したタタミの小上がりは、子どもの遊び場やお昼寝の場に最適。床下スペースも無駄なく活用しており、ロボット掃除機の基地や、壁掛けテレビにつながるプレイヤーが収まる造作棚、おもちゃや文房具などがすっきり片付く約2畳の引き出し収納も備えている
扉の向こうは、会議中
ダイニングに隣接するHさんの書斎。オンライン会議中は、室内のスイッチで入口の「ON AIR」が点灯する仕掛けだ。アクセントになっているブルーグレーの扉は、北欧デザインが好きな夫婦に三浦さんが提案したもの
目線のマジック
シックにまとめたキッチン。三浦さんが提案した木調の折り下げ天井は「落ち着いた雰囲気になるだけでなく、他のエリアの天井が高く感じられます」とHさんに好評。また冷蔵庫の上の空いたスペースを活かして、キッチンペーパー専用の棚を造作している
木陰ではたらく
Hさんこだわりの坪庭。家の真ん中に配置することで、家じゅうに光が取り込まれる。たまに気分を変えて、ここでリモートワークすることもあるそう
気配のそばで、はたらく
ダイニングには、壁で囲まれたコンパクトなワークスペースを設けた。今はHさんがリモートワークで使っているが、いずれ子どもの宿題スペースにする予定だ。奥のリビングとは木製ルーバーで緩やかにゾーニング。キッチンで作業をしながら、ルーバー越しに子どもの様子をうかがうことができるので安心だ
椅子ふたつ分の贅沢
屋上に憧れていたHさん。「テーブルとイスが2つ置ければ充分。それだけで豊かな気持ちになります。ここでビールを飲むのが最高の贅沢です」
土間でこもる、わたし時間
玄関に隣接する土間は、夫人のリモートワーク専用スペースになっている
こもって、ひらめく
Hさんの書斎は、濃紺の壁紙と木調の天井で落ち着いた雰囲気に。2.5畳ほどのコンパクトサイズだが、このこもり感が良いとのこと。借景の緑で仕事中もリフレッシュできる
やさしい朝が、ここにある
坪庭に面する窓から優しい光が差し込む寝室。グレーのアクセントクロスは三浦さんが提案した
抜けと光のウェルカム
「玄関を開けた時に暗いのがイヤだった」とHさん。室内に入ると坪庭から光が差し込み、心地よい開放感に満ちている。また視線が抜けることで、奥行きと広がりも感じられる
開くと、頼もしい
扉を開けると階段下を活かしたシューズインクローゼット。靴だけでなく子どもの自転車やヘルメット、Hさんの電動キックボードなどもすっきりしまっておける。まだまだ余裕はあり想像以上の収納力だ
毎日“ぴたり”が気持ちいい
廊下のスペースを有効活用した洗面エリア。三浦さんが設計した造作の洗面台は、日々使いやすさを実感しているそう。「収納かごがぴったりと収まる棚はもちろん、タオル掛けの位置一つにしても『なるほど!』と感動します。何気ない一つ一つのプランが、すべて計算されているのだと思います」とHさん
このサイズ感、未来基準
洗濯機や収納ボックスのサイズに合わせて、ぴったりと収まる棚を造作。生活感までもすっきり収納できる。ガスコンセントもあり、将来はガス衣類乾燥機が設置できるように設計されている
トイレで流れる名曲セレクション
トイレは爽やかなブルーのクロスを採用。使用中は人感センサーが作動して、15分間音楽が流れるという。こちらはHさんのアイデアで、このようなユニークな仕掛けが家じゅうに散りばめられている
この階段、暮らしの裏ルート
屋上はLDKから外階段でアクセス。真下は坪庭になっている。ちなみに正面に位置するのはロフトスペース